最初で最後の一夜

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 お父さんはギャンブルと呼ばれるものがとにかく大好きで、パチンコや競馬等一通り手を出していたそうだ。そのハマり具合はついに借金を作るくらいだったらしい。 「いくらなの……?」 「八百万……」 「は、はっぴゃくまん!?」  お父さんが亡くなったことで、借金の連帯保証人であるお母さんが支払わなければならないものらしい。  お父さん、まさかそんなものを残していたなんて。 「つまり、三谷須さんはお金を取り返しにきたってこと?」 「それはそうなんだけど、実はある条件を提示されて……」 「母さん!そのことは紫には話すな!」  言いかけるお母さんをお兄ちゃんが制する。 「でも……」 「紫にそんなことは絶対させない!」 「話して」  私はお兄ちゃんとお母さんを真っ直ぐ見つめる。 「受け止める覚悟はできてるよ」 「紫……」 「お願い、お兄ちゃん」  お兄ちゃんは苦悩の表情を浮かべた後、意を決したように口を開いた。 「……三谷須さんはある条件を出した。その条件を飲めたら借金は全額帳消しにするって」 「その条件って?」 「……紫を嫁に欲しいって。紫が結婚してくれるなら、借金はなしにするって言うんだ」
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