最初で最後の一夜

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 私との結婚が条件!?なんで?  三谷須さんと会ったのは今日が2回目なのに、どうしてそうなるの? 「紫に一目惚れしたらしい」 「そ、そうなの?」 「でも紫、結婚なんてする必要ないから!」 「お兄ちゃん……」 「借金は俺がどうにかする!店も潰させない!」 「お店、潰れるの?」  私が聞き返すと、お兄ちゃんはハッとした。それから大きく肩を竦める。 「……支払えないのなら、店を売ってそれを担保にしろって」 「そんな!」 「支払い期限が迫ってる。それまでに八百万用意できなきゃ、店を売るしかない……」  このふじみやがなくなる?  そんなこと考えたこともなかった。  私が生まれた時からたくさんの思い出が詰まったこの店を、売らなきゃいけないなんて。 「……お母さんはそれでもいいと思ってる」 「お母さん!?」 「店を売るしか方法がないなら、仕方ないわ……」  そ、そんな……。 「母さん、俺が何とかするよ」 「これはお父さんの責任よ。そしてお父さんを止められなかった私の責任でもある。 葵が背負う必要なんてないのよ」 「でも!ふじみやを潰したくないよ!」  お兄ちゃん……。  お兄ちゃんはこれまで、忙しい両親の代わりに私の面倒を見てくれた。時には友達と遊ぶことを我慢してまで、私の側にいてくれた。
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