2人が本棚に入れています
本棚に追加
哀れな化け物をどうか裁きたまえ
「アハハハハ! イヒヒヒヒヒ!」
燦々とした太陽と、凛々とした木々、鮮やかな向日葵が見守るキャンプ場。
そこで笑い声が聞こえるとするならば、長期休暇を満喫する学生達のものであったり、思い出作りに忙しい親子のものであったり、そう考えるのが普通だろう。
この日は違った。
黒いフードに群青のジーパンを着た三十代の男は、日光の反射で鋭く輝くナイフでもって、人々を刺していく。
草花がどんどん鮮血を吸い込んでいく。人々は甲高い悲鳴を上げて逃げ惑う。
我が息子を庇う父と母を見て、男は口角を下品に上げる。母の腹を蹴り上げ、子どもを奪い取る。カカカと舌を出して笑った男は、両親の目の前で、子どもの喉元を突き刺した。顔を赤くして突進する父親の腹を仕留め、青白い顔で呆然とする母親の心臓を抉った。
その光景を虚ろな見ていた、中学一年生の、一人の少女。
彼女は、たった今殺された両親の、もう一人の娘だ。男の子の姉だ。
地面にうつ伏せになっている彼女は、家族が殺されるより前に、脇腹を刺されていた。
ドクドクと血が地面に広がる感覚に吐きそうになりながらも、少女は男への恨みを心臓に刻みこんだ。
よくも父を、母を、弟を……!
許さない許さない許さない殺す殺す殺す殺す!
少女は怨嗟に抱かれて眠りについた。
最初のコメントを投稿しよう!