哀れな化け物をどうか裁きたまえ

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哀れな化け物をどうか裁きたまえ

「アハハハハ! イヒヒヒヒヒ!」  燦々とした太陽と、凛々とした木々、鮮やかな向日葵が見守るキャンプ場。  そこで笑い声が聞こえるとするならば、長期休暇を満喫する学生達のものであったり、思い出作りに忙しい親子のものであったり、そう考えるのが普通だろう。  この日は違った。  黒いフードに群青のジーパンを着た三十代の男は、日光の反射で鋭く輝くナイフでもって、人々を刺していく。  草花がどんどん鮮血を吸い込んでいく。人々は甲高い悲鳴を上げて逃げ惑う。  我が息子を庇う父と母を見て、男は口角を下品に上げる。母の腹を蹴り上げ、子どもを奪い取る。カカカと舌を出して笑った男は、両親の目の前で、子どもの喉元を突き刺した。顔を赤くして突進する父親の腹を仕留め、青白い顔で呆然とする母親の心臓を抉った。  その光景を虚ろな見ていた、中学一年生の、一人の少女。  彼女は、たった今殺された両親の、もう一人の娘だ。男の子の姉だ。  地面にうつ伏せになっている彼女は、家族が殺されるより前に、脇腹を刺されていた。  ドクドクと血が地面に広がる感覚に吐きそうになりながらも、少女は男への恨みを心臓に刻みこんだ。  よくも父を、母を、弟を……!  許さない許さない許さない殺す殺す殺す殺す!    少女は怨嗟に抱かれて眠りについた。
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