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「真希に、謝らないといけないんだ」
真希はふるふると首を横に動かしている。
「真希に、嘘の事件を教えていたんだ」
「嘘の、事件って……?」
「真希の家族を奪った事件は、夏の事件なんだ。ゴールデンウィークじゃないんだよ。トレンチコートの女の子が殺されたのと、真希の家族を殺した事件は、別の事件、なんだ」
「そんな、どうして、そんな嘘を」
マリアへの懺悔は止まらない。
「真希の家族を、殺した犯人、は、死んでる」
「は……?」
「警察が、来る前に、自決した」
真希が息を呑んだ。
「だから、同じ年に起きた別の事件を、真希の家族を奪った事件、だって、ことにして……その事件の、犯人に、化けてた」
「どうして、どうしてそんな嘘を!」
「真希が、消えそう、だったから」
震える顔を小さく傾ける真希に、周斗は顔面をぐちゃぐちゃにしながらも、ひたむきな信仰を捧げる。
「家族と同じところに、行こうとする、真希に、生きてほしくて。犯人を殺すまで、死ねないって、言ってくれたから、偽物の、犯人に、化けた。今まで、カメラに映った犯人も、僕が化けた姿。復讐の決行を、急いだのは、真希に、嘘が、バレると、いけないから」
「だからって、周斗が死ぬこと——」
「僕は、真希の家族を、殺した」
周斗は罪を告白する。
「あの日、男に、聞かれた。人が、子どもが、たくさんいる、ところを、教えてって。だから、真希が、行くって、言ってた、キャンプ場を、教えた」
周斗は、最愛の人の家族を殺めた凶悪犯に、助力をしていたのである。
「僕の、せいで、多くの、人が、死んだ。だから、僕は、償わなきゃ、いけなかった。それに、相応しい、のは、真希、だった。真希が、生きて、くれる、なら、喜んで、殺人鬼として、報いを、受けようって、この、計画を、実行した」
どんどん目を開ける力がなくなっていく。マリアの雫が頬に垂れてくる。
「やめて、行かないで、ごめんなさい、私が、復讐なんて望んだから……! もうやめるから! 復讐しないから! ねえ、お願い! 開けて! 開けてよ!」
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