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真希は周斗の肩を揺する。
「お願いよ、これ以上私から、大切な人を奪わないで!」
その声は、今まで聞いた中で一番大きく、掠れて、乱れていて、命の鼓動に溢れていた。
ドクドクと血が広がる感覚に吐きそうになりながら、周斗は口角を上げる。
「理不尽に、命を、奪われたのに、僕に、死ぬなって、言ってくれる。花という、命を、育ててる。そんな、真希なら、きっと、幸せに、なれるから」
ああ、愛しのマリア。
「復讐が、終わっても、どうか、生きて」
真希が命を奪うために生きるのは、自分の死でもって終わる。
だから次は、命を守るために生きてほしい。
真希にはそれができる。虐められていた畠周斗という命を、救ってくれた人だから。
周斗の目が活動を終える。
最期まで動き続けたのは聴覚だった。
言葉にならない泣き叫びは、季節外れの大雨であった。
地面で何かが引き摺られたような、キキキという音がした。その音は真希に近付いていっているようだ。
「また、置いていかれるくらいなら、私、私……! ああああああああ!」
周斗に聞こえたのはここまでだった。
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