百合の候

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彼女いわく、魔獣は売り物になるらしい。 特に血は価値があるという。 固めれば魔力を孕んだ宝石ーー所謂魔力石になるからだ。 恐らくこの薬は、魔獣の血を含んでいる。 人が続けて接種した結果、どうなるのかーー。 その答えはすぐに出た。 近くの遊郭で殺傷事件が起きたのだ。 犯人は第8師団所属の白井少尉ーー澄川少尉の同期であった。 確保された白井少尉は常軌を逸しており、言葉にもならぬ喚き声を上げながら暴れ続けていたという。 そしてそのまま元には戻らず、1週間後、衰弱死した。 彼の部屋からは例の薬が見つかったが、上層部の意向で公表されることはなかった。 数週間後、関東近郊の山中にて、澄川少尉の遺体が発見される。 獣に壊された体は酷い有様で、検死を担当した軍医が心身を病み、しばらく働けなくなる程だった。
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