百合の候

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「はあ?」 そんなものが流行っているなど、街でも聞いたことがない。 訳が分からなかった。 「……なんで分かるんだよ」 かろうじて聞くことができた愁哉に、同期は更に衝撃的な発言をした。 「実は俺も誘われたことがあって」 ぎょっとして顔を覗き込むと、同期は慌てて、澄川少尉からじゃないぞ、と否定した。 「藤野軍曹からだった」 藤野軍曹といえば、澄川少尉が特に可愛がっている下士官である。 「ずぶずぶだな」 「だよな……」 同期は引きつり笑いを浮かべた。 「俺、どうしよう……」 後輩に相談された手前、無関係を貫くことはできない。 だが深く関わり合いになるのは危険なことも事実。 それに……。 愁哉は不吉に積もった粉薬を見つめる。 これは一体今の時点で、どのくらいこの師団を侵しているのだろう。 新種の薬と言ったが、一体なにが入っている? そしてどこにどんな影響がある? 「おい、それよこせ」 「えっ」 同期がみるみる泣きそうな顔になる。 「違えよ!」 誰が使うかと愁哉は目を三角にし、薬を取り上げた。 「ちょっと調べてみる」 「ど、どうやって」 「知り合いに詳しい奴がいるから」
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