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 数ヶ月後。    片道切符を手に持ち、電車に揺られている。  転校先、家族構成、現住所。全部調べ上げた。  怖がられる権利はない。はじめに俺がされたことなのだから。  俺を買い取られた代償の2万円。  茶封筒に入ったままだ。   「琉生くん……なんで、」 「鈴木晴人。久しぶり」 「なんで家を知ってるの?」 「調べ上げたんだよ」 「それってストーカーって言うんだよ?」 「お前にだけは言われたくない」    俺の手のひらの中には、晴人からもらった2万円を握りしめている。このお金で――。 「お前の1日を2万で売ってくれ」 「え、」  今度は俺が、晴人の時間を買い取ろう。  今までのこと。これからのこと。  たくさん話そう。  聞きたいことは、全部質問攻めしてやろう。拒否なんてさせない。    今日の晴人の時間は俺が買い取ったのだから。消えていた空白の時間を埋めるには充分だ。  これから先の俺らの未来には、時間はたくさんあるのだから。   【完】
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