白銀の瞳は月夜に輝く

2/8
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「ねぇ、ママ。なんで私はこんな目の色をしてるの?なんで皆と違うの?」 当時6つの時だったか、私は自分の瞳の色が周りの人と違うことに疑問を抱いていた。 『レミ、それはね、特別な者の証なのよ。このコルク村を救う希望なの。貴方は選ばれし人間なのよ。』 母は私の背丈に合わせるようその場にしゃがみ込み、両肩に手を置き(さと)すように語りかけた。まだ幼かった私は、母の言うことを信じていた。自分はこの村を救う希望で、選ばれし人間なのだと。だから周りの人とは違う” 白銀の瞳 ”を持って生まれてきたのだと。 ──生まれてから現在に至るまで、私は外へ出ることが許されてこなかった。なぜ外へ出てはいけないのかと周りの大人に尋ねるが、本当の理由を誰も教えてはくれなかった。二階にある自室の小さな窓から見える、自分と同じ歳くらいの子達。その子達は元気いっぱいに外で自由に走り回っていた。その状況を幾度も目にし、なぜ自分だけが外へ出てはいけないのかと、子供ながらに疑問を抱いていた。他の子達と同じように外に出られないことに対して、時折泣いてしまうこともあったが、そんな時は『外は怖いからよ』『魔物が住み着く森の中へ吸い込まれてしまうからだよ』と言われるばかりで、幼かった私は言われたことをそのまま信じるしかなかった。 陽の光を直接浴びることが殆どない日常だったが、月に一度、新月の日だけは、親同伴を条件に外へ出掛けることが許されていた。 遡ること10年前。 その日はちょうど、新月の日だった。数日後には9歳の誕生日を迎えるという事もあり、少し早めの誕生日祝いにはなるが、家族みんなで街へ降り、非日常を楽しんでいた。 「ねぇねぇパパ、ママ、見て見てっ!このお洋服どう?レミ似合う?」 『すっごく似合ってるわよ。』『可愛いぞ〜レミ。』 両親の柔らかな微笑みが嬉しかった。 抱きしめてくれるその腕の温かさが嬉しかった。 両親は私の頭を優しく撫でてくれた。 けれど、直接触れてはくれなかった。 赤いポンチョに付いたフード越しにしか、撫でてはくれなかったのだ。街に降りている間は、終始それを目深に被せられていた。つい楽しくなって動き回る度にめくれそうになるそれを、両親は血相を変えて押さえていた。今でも、鮮明に覚えている。 (パパ…ママ…どうして私は、お外ではいつもフードを被っていなきゃいけないの…?なんで皆と一緒じゃダメなの?) その日の帰り道、街から村へと向かうバスに乗車していた際、とある騒ぎに巻き込まれてしまった。 魔物が住み着いていると噂されている” 白銀の森 ”のすぐ近くの道端に、15歳前後くらいだろうか、一人の少年が血を流して倒れていたのだ。 コルク村へ帰るためにはその道を通らなければならないのだが、そこを塞ぐようにして人だかりが出来ていたものだから、私たち家族一行は足止めをくらってしまった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!