白銀の瞳は月夜に輝く

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思っていたよりも、夜の森は肌寒かった。静かに鳴く虫の声が、より一層夜の世界と言うものを連想させた。(うごめ)く何かを感じるこの森には、一体なにが住み着いているのだろうか。森に足を踏み入れてからどれくらい経ったのか分からなくなっていたが、気にすることなくただひたすら茂みをかき分け奥へ奥へと進み続ける。そしてようやく、視界が開けた場所へと辿り着いた__。 「はぁ…はぁ……。あぁ…すごい…部屋から見るよりも…大きぃ…綺麗…。」レミは肩を上下に動かしながら途切れ途切れに息をする。そして、月のその美しさに魅了されてしまうのだった。ふと、直径1メートルほどの大きな岩が目に入り、それに近づき腰を下ろした。改めて空を、満月を見上げる。 ──その時だった。 『人間の娘…何故一人でここにいる?』どこからともなく聞こえたその声に、レミは反射的に体を縮めた。一雫の汗が、頬を伝う。そして後ろを振り返る。が、そこには誰もいない。「えっ…いま、確かに声が…。」そう思いながら前へ向き直った時だった。 「はっ……!!」そこには、一人の男が立っていた。一見人間の様にも見えるが、月明かりに薄らと照らされたその眼、尖った耳、長い爪とその者の纏う雰囲気からして、人間のそれではない事が嫌でも分かってしまった。そしてその者は、こう呟いた。『その瞳……実に美しい…。』と。 「あっ…あな…あなたは…誰ですか?人じゃ…ないですよね…?」震える声で、レミはそう尋ねる。 『私が怖いか…?人間の娘。私は…悪魔だ。』 それが、人生初めての、悪魔との遭遇だった。 悪魔との、月夜の遭遇__。
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