虚構日記 2023/10/06

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虚構日記 2023/10/06

 姉の髪がプリンになっている。  いつも妹が、まめまめしく金髪にしているはずなのに。 「レミのことを聞かれたから」と姉は言う。  姉のことだから、二人の関係をありのまま話したのだろう。妹の身に危険がおよばない程度に。  そこから妹の心情をゲスパーしているあいだに、姉が読んでいた本を閉じた。  スティーブン・キングの新刊。このあいだ私が買ってきたやつ。上巻だ。  読み終わったんなら私が読むから返して、と言ったら、下巻、とだけ言って投げてよこした。  あぶねえな、ハードカバーだぞ。  下巻をとりに部屋に戻って、本棚の隙間の位置が変わっていることに気づいた。  また勝手に妹が、持っていった本を返しつつ、新たになにか借りていったのだろう。姉2の本棚を、BL図書館だと思ってる。  妹を養子にむかえたのは、ギリギリ小学生の頃だったはずだ。サトルとレミはカップルだとかいうことまでは、当時は話していなかったはず。  姉を「アネ」、私を「アネツー」と呼んだのは、最初は反発心だったのかもしれない。今頃気づいたけど。  サトルは気にしなかったし、私は私で、プルツーみたいでいい、なんていって普通に返事した。  妹は、どちらかというと姉に懐いている。  妹は、どちらかというと顔が良いBLが好きだ。ガチムチ系は好まない。ナマモノも苦手だ。BLマンガが実写ドラマ化したときは、なにかギャアギャア言っていたけど、全部結局は、視聴することを自分に許す、エクスキューズだったっぽい。  棚から消えているのは、攻めの顔が良くて受けがゴリラなジャンル。  姉の、ちょっとプリンになった頭髪。  導き出される答え。  大好きな姉のために、妹は今頃、苦手を克服しようと勉強中なのだ。  棚から消えてるの、私のお気に入りの、スネ毛どころかケツ毛も描く作者のだけど、大丈夫かな。  おやすみなさい。
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