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虚構日記 2023/10/01
「プチ家出」という言葉が嫌い。
当事者が言うなら、そんなもん「ファッション家出」だ。
外野が言うなら、シンプルに、バカにしてる。
こんな夜に、泊めてくれと頼める友人はいない。正確には、頼めばきっと泊めてくれる友人はいるけど、遠慮なく泊めてもらう胆力のある「私」がいない。
一人旅をしたとき、旅館もホテルも女ひとりと聞くと「満室で」と断られたことを思い出す。
こんなふうに、家に帰りたくない日は、子どもの頃から定期的にあった。自家中毒というんだと思ってた。
店主のじいさんが船をこいでるコンビニに入る。奥さんの手作りコーナーは、周回遅れのマリトッツォに変わっていた。残っていた4個全部をカゴに入れて、レジ横のチョコエッグと一緒に会計を済ます。レシートは「マリオット」になってた。
外の灰皿のそばでチョコエッグをあけたら、安室さん。これはダメだ。マリトッツォにつっこむわけにはいかない。餃子じゃなくてこういうものにいれなさいよと、手本をしめしてやるつもりだったのに。
帰ると、妹が姉の風呂の介助をしてた。私が昔作ってやったゴスロリ服で。汚れてもいい普段着扱いかよ。
妹は化粧をしてない顔でひゅっと目をむき、着心地の良い部屋着といえよ、と口ごたえしてきた。私が作ったことは忘れているようだ。
キッチンではカレーが、魔女の鍋かってくらいグツグツしてた。味見したら、ガチャでひいた「田村さんちのカレー」レシピだ。
よそンちのカレーレシピのガチャガチャ、ネット記事で読んで、面白そうって言ったのは姉だった。どこかから手に入れてきたのは妹だ。
カレーのあと、二人は同じところにクリームつけながらマリトッツォにかぶりついた。
安室さんを入れといてやっても良かったかもしれない。
おやすみなさい。
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