3人が本棚に入れています
本棚に追加
「それはそうと、秋夏…そっちはどうなんですか?」
「そうねぇ…あまり芳しくはないのよ、最近何かと…締め付けがキツくてねぇ」
「仕入れが難しくなってると…」
「知ってたくせに」
マリーの呟きに、少女陽月 秋夏は口先尖らせて呟きに呟きで返す、マスターが二人に軽いつまみを置いた所で、マリーはそのつまみのピーナッツをつまみ上げ、秋夏の方に向けて、指で潰した。
唐突なマリーの奇行に秋夏は眉根を思わず寄せた。
「秋夏、貴女今どう思いました?」
「頭おかしいと思った」
「えぇ、そうですね、そうでしょうね」
指で潰したピーナッツ、落ちないように咄嗟に握り混んだマリーは手を開いて、潰れたピーナッツを舐めるように口に入れて、心底引いている秋夏に言う。
「人より奇妙に踊ってたい、踊り続けたい、私は人混みに埋もれたくないんです、だから同じように奇妙な躍りをする輩が気に食わない、目立たないじゃないですか?他にも奇妙な奴が居たら」
「話が見えないわ、何?要約すると私が気に食わない訳?」
「です、秋夏嘘はダメですよ?噛ませなさい、私に…Shall we dance?あなたと踊りたいんですよ、コラボと行きましょうよ、ね?奴隷商人さん?」
「撒いてた種の在りかを知ってたか、まぁ…良いわ、オーライマリー、じゃあ気品漂うダンスホールで一緒にブレイクダンス踊ってもらうわよ…阿鼻叫喚待ったなし」
「ふふ、えぇ…楽しくなりそうですね」
秋夏の返答に満足そうにマリーは、恐ろしく怖くなる程に整った美しい顔を緩めて酒を傾けた、そんなマリーと楽しくも静かに秋夏は夜の時間を楽しんだ。
その翌晩、商業国家ロザミィートの大貴族の家が一晩にして襲撃され崩壊した、貴族の長女、次女は行方不明、貴族の党首と婦人は首だけの状態で発見される、使用人、お抱えの騎士達も同様首だけで発見された。
胴体は強烈な熱か何かによって灰とかしていたらしい、目撃者によると黒い長い髪の狐の面をした朱色の小紋を身にした女と、カッターシャツと黒ズボン、金髪セミロングの無地の白面を被った女がその晩貴族の屋敷に入っていったそうだ。
○
悪党は酒を傾ける、それはまるで自分への御褒美のように美味しそうに傾ける、酒があって肴もあって…怯える少女達に首輪を着けて。
悪党は退屈でアクビを溢す、手にした誰かの金銀財宝に凭れかかって、黒い髪を後ろから眺め、黒い髪は後ろで暇しているであろう金の髪に言う。
「次は、王族よ…Shall We Dance?マリー」
「えぇ、喜んで…にしても、よく根回ししてますよね秋夏って」
「これでも奴隷商人のトップだからね、さぁ…帰るわよ!!」
最初のコメントを投稿しよう!