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まるでゾンビだ。
「はあ、はあ…………」
見たことがない住宅街の路地で、倒れ込みたいのを我慢してゆっくりと歩き続ける。もう、夜空を見上げる元気がない。どんだけ走ったっけ。
俺、まるでゾンビだ。
よろよろと歩いて、求めるものは…………。
「がああああ。生き物じゃなくて、佐倉さんの気持ちをよーこーせっ?!……ゲホ! ……マ、マグボトル……あ、うっぞ?! ゲホゲホ!」
空っぽ。そうだった。マグボトルの水はとっくに飲みほして……補給がめんどくさくて塩タブレット舐めてたんだ。
塩タブも、もうない。
「自販機、水道……けほ。はは、俺なっさけねえ……あ! あったぁ……」
小さめの公園の入り口に、ポツリと光る自販機。ICカードをかざして水を買う。一気に身体に沁みわたる水分が心地いい。
「ぷはあ! うっま!」
水、最強!
「ふう……ん?」
あれ?
公園って普通は水道……あるんじゃね?
「は。思考能力、カスッカスすぎんだろ……」
カバンとラケットを置いて、ベンチに座った。
足がガクガクしてる。
手が震えてる。
もう、月を見上げる気力さえない。
うつ向くしかできない。
月には手が届かないって思いしったから。佐倉さんは、遥か彼方の……雲の上の存在になってしまったから。
「……三年間……俺は……何をしてたんだよ! ううっ」
こんなことなら。
こんなにツラいなら。
俺、馬鹿だったなあ。
もっと頑張ればよかった。
ダメもとで告ってりゃよかった。
「ふ、ぐ、うう……ずずっ……う、えええ……」
涙、止まんねえや……。
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