ずるい男の執着心

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幸人の帰りを待つ間、俺はソファーに座り、テレビを観ていた。 特にみたい番組があるわけではない。 ただ、無音の空間にひとりで居ることが、堪らなく寂しく感じた。 ガチャ… 玄関の鍵が開いた。 幸人が帰ってきた。 俺はソファーから立ち上がり、玄関に向かった。 「おかえり。」 「修二さん、ただいま。」 「先にシャワー浴びるか?」 「よかったら、修二さんも一緒にどうですか?」 「俺は構わないけど。」 「なら行きましょ。」 俺は幸人に手を引かれバスルームへ向かった。 「脱がないんですか?」 「脱ぐけど……」 俺は何を躊躇っているのだろう。 何度も幸人とは身体を重ねているではないか。 「俺、店でのこと嬉しかったんです。」 すると、幸人は俺のズボンのベルトを外した。 「修二さんが嫉妬してくれるなんて夢みたいで。」 「全く、俺もどうしたんだろうな。」 「俺があなたの男になったから?」 「そうかもな。」 もうどうにでもなれだ。 幸人に惹かれている自分を認めれば楽になる。 俺を変えたこの男を二度と逃がさない為に。 「俺が幸人に惹かれていることを認めたら、俺から逃げないと誓えるか?」 「はい、俺は修二さんの傍に居ます。」 「それを破ったら…」 「破る気はありません。でもその時は、俺を殺してください。」 「そんなに俺が好き?」 「好きじゃない。愛しています。」 幸人が俺を真っ直ぐ見つめて言った。 こんなにも誰かを欲しいと思ったことは、生まれて初めてだ。 これを愛というのなら、俺は今、初めて本当の愛を知った。
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