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Prologue テンプレ転生、に何故か失敗?
『おお、あわれな鷲兎よ。三つの願いを叶えましょう』
突然そんな声が響いた。
気持ちよく寝ていたところを無理矢理起こされたような、気持ちの悪い寝覚め。
「あと5分、5分お願い」
『あ? 三つの願いを叶えるっつってんだろ。おい、起きろ』
でも声がうるさすぎて二度寝できない。なんだよもう。寝たい、寝かせて。
しかたなく薄っすら目を開けても世界は結局真っ白。まだ夢か。
もしや夢の中でエンドレスで起き続けるとかいう不毛系統の夢? 勘弁してほしい。本当に。
『おい鷲兎、さっさと願いを言え。忙しいんだよ』
3D音源を聴くように、耳のすぐそばとか後ろとかとにかく至近距離の四方からぶっきらぼうな声がした。
無視し続けたせいか、声はだんだん不機嫌そうになってきた。けれども不機嫌さでいうと俺も同じだ。本当にうるさい。なんだコイツ。眠いのに。
『てめ、うるさいってどういうつもりだ。吾輩も忙しいのだ。何もやんねぇぞマジで。いいんだな?』
「何? 何だよもう」
『何、じゃない。願いだよ願い、テンプレだろ?』
願い? テンプレ?
いきなり言われても。ラノベの夢か?
『さーん、にーぃ、いーち』
「ちょ、ちょ待てよ」
いきなりカウントダウンとか焦るじゃんか。薄っすら目を開ければやっぱり真っ白。そういえばこれはラノベ設定でよくある最初に神様と会う部屋ライクな感じ。まぁさすがにマジってことはないだろうけど、一応何か言っとこう。念のため。
咄嗟に思い浮かぶもの。ええと。
「ゲーム欲しい。みんなやってるやつだ」
『みんなやってる?』
「そう。オルビム・ノービス・オンライン、略してOLO。流行ってるんだよ」
PrayStationでちょっと前に出た奴だ。みんなそんな話をしてた。
『それはどんなゲームなんだ?』
「ええとだな、オープンワールドなMMORPGにログインして、経験値を得るとスキルとかアバターを買えてそれでモンスターを狩ったり……」
なんとなくCMを思い浮かべる。けれども実際プレイしたことないからよくわからん。
『わかった。OLOな』
「え、わかったの?」
『神様だから。ほらあと2つ』
ええ? えっと3つの願いだっけ?
『ほら欲しいもの。早く』
声はせかすようにちょっとイラついている。急に言われたってそんな物出るわけ無いだろ。3つの願いの話だって持ち帰ってよかったんだから。
『にーぃ』
「待てよ待てってば、ええと、パフェ食べたい」
唐突に寝ぼけた頭に浮かんだのは風光堂のショーケースに並べられた各種パフェだ。フルーツパフェ、チョコパフェ、それに季節のマロンパフェ。この間前を通った時に美味そうだった。それだけ。
『わかったパフェな。いーち』
「待てよだから! えええええと猫、猫欲しい、ペット飼いたい。かわいくて元気なやつ」
うちはペット不可のマンションだから動物を飼うのは夢また夢だ。よし。なんとか3つひねり出したぞ。
『わかった、かわいくて元気な猫な。願いは了承された。では良き人生を。ガチャ』
ガチャ? 固定電話を切るようなアナログ音がした。
それでカメラがストロボ焚くみたいに真っ白な世界がさらにビカッと光り、次に目を開けたら森だった。うん? また夢?
けれども一瞬の空白の後、まるで時間が解凍されたようにさらりと爽やかな風邪が吹き抜ける。その風邪がそよそよと木々の葉を揺らす。見上げれば木が生い茂っている。高く伸びる木の枝葉の隙間からキラキラ輝く木漏れ日、地面の冷たさとほっぺたをくすぐる細長い草とその青臭さ。
夢にしては生々しい。
……どう考えても現実だ? なんでこんなところで寝ていたんだ?
「つかここどこ⁉︎」
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