銀の月

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ここで彼と共に過ごし、お互いを知り合った。トラウマを克服し、誰かに頼る安心感と心地よさを知った。 全てはここから始まった、というのは大袈裟かもしれないけど、世界が美しいことをハッキリと認識したのはここで過ごした日々の合間だったんだ。 俺と彼は早々に、部屋をどこにするか会議を開催した。いろんなシチュエーション、時代、国、雰囲気を模した部屋がある。以前も数日おきに別の部屋に泊まったりして楽しんでいたが。 「あの時はお互い独り身だったが、今は運命共同体だ。同じ部屋に泊まるだろう?」 もちろん、どこの部屋も二人で泊まれるスペースは余裕である。 「なんかそれじゃつまんなくねぇ? せっかく来たのに」 かつてのことを思い出し、なんとなく口にした。 「ハニーは一人で過ごしたいのかっ?」 夫の声が焦る。いや、別に一人で過ごしたいわけじゃないが、旅に出たんなら少し離れたっていいような気がしないか? 「まぁほら、前の旅の追体験ってことで、たまにお互い一人になるのもいいかもしれないぞ?」 「せっかく結ばれた場所だからこそ、出会いを噛み締めたいんじゃないか」 意見は真っ向から食い違った。 けれど俺は別にどうしてもってわけじゃない。夫の方は必死だ。
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