銀の月

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「だんなさま、しつれいいたします」 使用人の彼が、しずしずと声をかけてきた。その気配に気づかなくて、はからずも軽く肩が震えた。 「ああ、どうした?」 「お荷物はどうしましょうか? お部屋に運んでよろしいですか?」 「そうだな、妻の分も一緒に運んでくれ。部屋は」 夫は別荘の中で、一番広い部屋を指定した。 俺が初めてここにきた時泊まった部屋で、彼が初めて結ばれたでも部屋だった。 「あの部屋なら広いし、二人で至って狭くないだろう」 鼻息荒く言った。ったくこのデカいお子様は、どんだけ俺のことを手放したくないんだか。 「わーったよ、お前と寝てやってもいい」 誰の別荘でそんなこと言ってんだって感じだけど、ふんぞり返って言うと、彼は顔の皺という皺を全部くしゃりとさせて笑った。 運び込まれた荷物は持ってきたキャリーカート一人一つ分。そしてあらかじめ空輸した荷物それぞれ3個ずつ。俺の荷物のうち一つは、日本食をたんまり詰め込んだ和食セットだ。今回はシェフが来ないらしいから、とりあえず食事に困らないように詰めてきた。ここはリゾート地でちょっと言ったとからにスーパーもあるけど、田舎の島だからおいそれと欲しい食べ物が手に入るとは限らない。
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