銀の月

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全てをしまい終わったのは30分後。ついでに奴のも荷解きしたから時間がかかったのだった。 (あいつ相変わらずゴム持ってきてねぇんだ) 初めてこの部屋で彼と寝た日もそうだった。 もちろん今も使ってないけど、やっぱり持ってきてないんだなって思ったらちょっと笑えた。俺も持ってきてないんだから、人のこと笑えないけどさ。 「ハニーすまない、俺の荷物まで」 軽く鼻を啜っている。落ち着いたようで一安心だ。 「疲れたから酒飲みてえ」 肩を落とし大袈裟に疲れをアピールすると、夫は慌てて俺の肩を抱いた。 「大丈夫か! すぐに用意させる」 結婚しているとはいえ、こんなおっさんのわがままを真剣に聞くんだから世話ねぇったら。彼は手を叩き、すぐに使用人の彼を呼んだ。 「プールサイドに、ワインの準備をさせていただきました」 できる男だ。彼が手を叩いた瞬間に現れそんなことを言う。そしてあまりにもタイミングが良すぎて怖い。 「さすがだな! 注文通りだ!」 夫は満面の笑みでサムアップしている。聞けばここに来る前の時点で、着いたらプールサイドにワインを置いておいて欲しいと言っていたのだそうだ。 使用人の彼は人良さそうに微笑み、またスッと姿を消した。
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