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「この国の国民は、甘い物を好むらしいからな。アフタヌーンティーは角砂糖を5杯入れるミルクティーらしいぜ」
「げええ、俺そんな甘ったるいの絶対飲めねぇわ」
「俺も飲んだことはことはないが、アイツが店のコース料理に、それをオマージュしたものを入れたらしいぜ」
アイツとは、仲良しの五つ星シェフのことだ。
「ああー、シェフはな。味の探究心凄そうだもん」
「趣味と実益を兼ねているところもあるだろうが、そうじゃなきゃ五つ星は務まらないんだろう」
俺は美味けりゃなんでもいいタイプだけど、感覚を商売にしてる人間っていうのは、芸術家みたいなもんで、本当にちょっとしたものから、新たな作品のヒントを得てるんだろう。
「お前は、そういうのないの?」
何気なく夫に振ったら、彼はニヒルに笑って
「お前を見ていると思い浮かぶことがあるぜ、お前を楽にさせるにはどうしたらいいのかとな」
と言った。
「俺は、十分楽させてもらってるよ」
ちょっと呆れる。本当、俺に甘いんだからな。
とっぷりと日が暮れ、プールに照明が灯ってから、俺たちはようやく腰を上げた。
「おしょくじが、できました」
キッチンから出てきた使用人の彼は、日本語で、粛々と言った。
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