銀の月

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用意してもらったつまみを順に手に取りながら、他愛のない話を続ける。 月夜で薄明るい海を眺めていると、心も体もスッと力が抜けていくのがわかった。 波の音も穏やか。このまま朝まで過ごして、朝日まで拝みたくなってきた。 「ハニー、雨が降らなかったら、ここでオールしないか。キャンプだ」 「キャンプっていうのかそれ?」 「外で飯や語らいを楽しむのがキャンプだと教わったぜ」 雨は降らなそうに見える。見渡す限り、月一つと無数の星しかないんだから。 「まぁ、悪くねぇな」 俺も同じことを考えてた、なんて可愛いことは、恥ずかしいから言わない。 世界で一番信用してるやつと、自然の中で、酒を飲みながら過ごす夜が、楽しくないわけがなかった。 「よし、じゃあ、酒足してくるか」 勢いをつけて起き上がる。プールの水面が鏡みたいに澄んで、月がもう一つ浮かんでいる。 軽く伸びをすると、夫は「セクシーだな」と言って笑った。 「あ? 見慣れてんだろ」 「月明かりに照らされる姿は、見たことがない」 「そんなことねぇって、ベランダでたまに飲んでるだろ。同じだよ」 「マンションは街の明かりと音がうるさいから、今とは違うじゃないか」 俺には同じようにしか感じないが、彼にはそう感じるのか。
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