銀の月

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「迎え?」 「ああ、別荘の管理人が来る」 夫の別荘は専任で管理者がいる。総勢10名の管理者が24時間体制で別荘を管理、警護している。でも管理専用で、送迎は行っていないと聞いていた。 「一人高齢で退職することになったんだ。だから新たに雇ったんだ」 「え、面接とかして?」 「もちろんさ。オンラインと現地の管理者でな」 いつの間に。 彼の心の審美眼は確かだから、いい人を雇ったんだろうとは思うが。 「もともとドライバーをしていたらしい。だからそのまま送迎にも入ってもらうことになった」 「なに、現地の人?」 「ああ。俺は現地の人間しか雇わない」 それで雇用の捻出も担っているんだそうだ。 夫はニヤニヤしていた。 「きっとハニーも気にいるぜ、俺は一目で彼が気に入った」 「はーん」 彼ってことは男か、くらいにしか思わなかった。そして現地の人間ということだから、褐色の肌をしているんだろう、くらいしか。 送迎デッキを出ると眩しくて目が眩んで、俺もサングラスをかけた。レンズという暗がりの中はっきりと見えたのは、高級車が続々と乗り付ける賑やかなロータリー。 「まだ来ていないな」 彼は腕を組んで、首を伸ばしながらむこうをみていた。雲ひとつない空を見ているようにも見える。
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