銀の月

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「着いたぜ、さぁ降りよう」 満をくぐると、夫は荷物を持ちながら、彼に車を裏の駐車場に停めるよう言った。裏には彼の所有する車やヘリコプターなど、 10台ほど停められる駐車場がある。 「かしこまりました」 彼はしなやかに頷いた。 潮風が心地いい。真っ白い壁の階段を数段上ったところがようやくこの別荘の本当の入口。かつてを思い出し、胸が高鳴る。 「ハニー、荷物を持っていくから、先に上がってくれ」 デカいスーツケースを抱えた夫は、笑顔で俺に言った。階段を上がった先の景色は、今でも鮮明に思い出せる。あれから数年を経た。さぁ、記憶との違いはあるだろうか。 一歩一歩踏みしめて登る。手作りしたように、しっかり整えられていない階段の質感も懐かしい。 登っていくに連れて、見上げた空の面積が増えていく。真っ青な空に白い壁。そして徐々に見えて来たエメラルドグリーンの海。懐かしさと期待が入り混じって心臓がおかしい。 「うわぁー……すげぇ」 最後の一段を踏み込んだ。地中海を思わせる真っ白な別荘の全貌と眼下の海、頭上の空を一目で堪能する。つい口元が緩んだ。風もない、日差しがジリジリと照りつける感じがなお良い。 「どうだハニー、変わりはないか?」 追いかけて来た夫が、階段の下の方から尋ねた。
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