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三日目
真夜中だった。月は真上にあって、まるく光っていた。そこで何かに遭遇した。
ぼくは何かに追われていた。逃げても逃げても追いかけられている気がした。やがて工場地帯から畑が広がる場所に出た。どこだろうここ。見たことのない景色だった。
「もう逃げないのかい、まもる」
声がした。まわりには誰もいない。ぼくの背中を大量の冷や汗が流れていった。
「ここだよ。真上」
見上げるとそこに、大きな満月を背にしたなにかが浮かんでいた。黒い服に黒いフードを被っていた。
「おまえはなんだ!」
そうぼくが勇気を振り絞って叫ぶと、そいつはおや、と首を傾げた。その顔は知っている。そいつは江梨子だった。
「まもる、あんたのせいだよ。あんたのせいであたしは死んだ。だからあんたも死になさいよ。連れてってあげるよ。あの世にね。その前にひどく辛い思いをしてもらわなくちゃなんないけどね」
意味が分からない。江梨子がなんでそんなことを言うのかも、そして空にぷかぷか浮いていることも…。
「ぼくがなにをしたんだ!」
それを聞いた江梨子はニヤリと笑った。
「あんたがなにもしなかったからよ。まあいいわ。最初に手足をちょん切り、それから胴体で、最後の首。おおっと、その頭の中の脳みそも見てみたいわね。あんたの額をざっくり切り開いてあげるよ」
そう言って江梨子はスルスルとぼくのそばに降りてきて、大きな出刃包丁をぼくにつきだした。
「やめろ!」
その声が江梨子に届く前に、ぼくの腕に激痛が走った。
そこで目が覚めた。また嫌な夢を見た。こんどのはもっとひどい夢…もう悪夢だ。
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