四日目

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四日目

「と、まあそういう夢なんだよ」 「なにそれおかしいよ」 ストレートの長い髪をかきあげ、江梨子は困った顔をしながら笑ってた。 「だろ?」 「あんた夏休みのあいだ変なことしなかった?神社のお賽銭盗んだり、お墓のお供え物くすねたり…」 「しねえよ!どこのいたずらっ子だよぼくは」 また江梨子にゲラゲラ笑われた。まあそうだよな。ふつうそうだよ。こんなバカみたいな夢の話されたら、する反応ってそんなもんだよな。 「まもる今日は?」 「今日は部活」 「そう、じゃ一緒に帰れないね」 授業が終わってバスケット部の部室に行く。夢の話はあれからしなかった。一年生の部員たちがもう着替えていた。 「あ、先輩、小宮先輩が探してましたよ」 カゴに入れたバスケットボールを運びながら一年生のひとりがそう言った。 「マネージャーが?何だろう」 小宮美知子はバスケット部のマネージャーだ。同じ二年だがクラスは違う。その小宮が体育館の入り口に立っていた。 「まもるくん」 「おお小宮、どうした?」 「ちょっと話があるのよ」 「話?なんだよ」 「ここじゃちょっと…」 小宮は恥ずかしそうにうつむいて歩き出した。これはひょっとして告白か?いやいやそれはないよな。小宮は体育館の横にある道具倉庫裏にぼくを連れて行った。 「あのさ小宮…」 「笑わないで聞いて。あたし見たの」 「見たって何を?」 「あなたが江梨子ちゃんを突き飛ばすところ。電車の来るホームで」 「はあ?」 いやいや何を言っているこいつは?見たって言ったが、江梨子はさっきまで同じ教室に…いやあの夢か?…いやありえない! 「そういう夢を見たの」 「バ、バカバカしい!夢の話かよ!」 「聞いてまもるくん。あたしときどきおかしな夢を見るの」 「ちょっ…」 「いいから聞いて。その夢ってときどき正夢になるの。そういう夢ってきまってハッキリと見えるの。現実と区別できないくらいに…」 こいつ頭がおかしいのか?いやそれにしちゃ真剣だし、思い当たることもあるけど…いやいやそれはちがう。これはこいつの妄想だ。絶対そうだ。 「そいつには名前があるのよ」 小宮は続けて突拍子もないことを言った。
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