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日曜日
よく晴れた朝だった。あれからぼくは一睡もしなかった。恐くて眠れなかったのだ。日曜の朝は両親はたいてい寝ている。朝ごはんは冷蔵庫に入っている。それをレンジで温めて、パンを焼く。
「しかし参ったなあ…」
そうぼくはひとりごとを言った。何気なしにスマホをいじってた。ふと江梨子のことが気になり、つい電話してしまった。
「お、こんな朝早くめずらしいわね。どした?」
「あ、ああ…なんだか声が聞きたくって」
「ふふん、とうとうあたしにまいっちゃったって認めたのね」
「そんなわけ…」
「ジョーダンよ。あたしこれから塾なの」
ああ、江梨子は真面目に受験頑張ってるもんな。日曜日も塾か。
「ああ、忙しいとこ悪かったな」
「帰ったらまた電話するね。今日はえりこちゃんはちょっとおしゃれなんだぞ。昨日買った白いリボンで髪をまとめてんの。ワンピなら似合うんだけど今日は制服よ」
「白いリボン?」
ぼくは何かを思い出した。
「お、おい待てよ!駅には…」
「悪いけど時間。切るねー」
「おい!」
いきなりテレビがついた。ぼくがあわててスマホのおかしなところをタッチしたようだ。スマホで明かりやエアコン、テレビがつく。ニュースをやっていた。
――行方不明だった高校二年の小宮美知子さんが、さきほど公園の植え込みで発見されました。発見時、小宮さんは心肺停止の状態で、首に絞められたような跡があると警察より発表がありました。警察は事件の――
心臓が、こんなに早く、こんなに大きく鼓動することを、ぼくははじめて知った。
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