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ナイトメア
大変なことが起きている。めまい…いや目がかすむ。動揺は頭の芯まで麻痺させたようだ。だがこうしていちゃいけない。江梨子だ。江梨子を助けないと、夢と同じことが起きる。ぼくはそう思った。
夢魔――ナイトメア――死神がきっと小宮を殺したんだ。ぼくに悪夢を見せて。だから江梨子もきっと…。
ぼくはジャージのまま外に飛び出した。早く駅に!早く早く!走りながら自転車を使えばよかったと思った。だがもう戻っている時間はない。
駅の階段を駆け上がる。いつもこんなに長かったっけ?ちくしょう、ぜんぜん進まない。でも電車は…まだこないようだ。急いでホームに!
階段を駆け下りようとしたところで江梨子が見えた。あの夢のなかで見た江梨子だった。
「江梨子!」
ぼくは叫びながら階段を駆け下りた。江梨子は驚いたような顔をしてた。間に合った。ぼくはそう思った。
――まもなく一番線に電車が到着します。到着の電車は…
電車が来ちまう!江梨子はぼくに手を振ってホームの白線に並んだ。もうじき電車が…ダメだ!ダメだダメだ!
江梨子のうしろに誰か立ってる。見たことがある。江梨子の顔をした黒いフードを被った…死神だ!江梨子を突き落とすつもりなんだ!
「やめろーっ!」
ぼくはとっさに江梨子をつかみ、ホームの真ん中まで押し戻した。江梨子はびっくりした顔をしてた。ああ、江梨子は助かったんだ。死神は消えていた。もうどこにもいなかった…が、ぼくは反動で白線を超えてしまっていた。電車の運転手と目が合った。
そうしてぼくは線路に落ちながら、きみの声を聞いた。ナイトメア――死神の声だ。
「まもる、これがきみの死だよ。きみはこうやって死ぬんだ。どうだい?痛いだろ?苦しいだろ?きみがどれほど苦しもうと、犯した罪は消えないよ」
――犯した罪?なにそれ
「とぼけるのかい?いまになっても。きみが殺した小宮美知子のことだよ。好きでもないのにもてあそんで、挙句、邪魔になったら殺しちゃう。なんて傲慢なんだ、きみは」
――そんなことはしていない!
「ああそうさ。きみはまだしていない。でもするんだよ。これからね。だから先に殺しておいてあげた。だってきみじゃ、かなり苦しませちゃうからね」
――ちがう!なに言ってんだよ!
「さあて、きみももう死んじゃうし、つぎは江梨子ちゃんを殺そうかな。どうせいつかきみに殺されちゃうんだからね」
――な、何を言ってる!
「じゃあ、がんばってね、まもるくん。あははははははは…」
目が覚めた。ぼくはベッドの上で目を覚ました。夢だったのか?だったらとんでもない悪夢だ。あれから寝てしまったのだな。ああ、もう朝か…。
スマホには今日が日曜日の朝七時と表示されていた。今日は七日目、だ。ぼくはこれからどうしたらいいんだ?
――おわり
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