月夜に見つけた王子様

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 そして今日はこんな話から始まった。 「柳野くんは三日月って好き?」 「うーん、まあ、好き、なのかな」  正直なところよく分からない。まあ嫌いではないが、あんまり考えたこともなかったから。 「私は好きよ。実は私二年生になるほんの少し前にね、三日月の日の柳野くんを見たことがあるの。夜の公園のベンチで月を見ながら肉まんを頬張ってたわ」  ああ、覚えてる。その時は色々とむしゃくしゃしたことがあって、でも肉まん食べてたら全部吹き飛んじゃったんだ。僕って単純。  けど、まさか肉まん頬張ってる姿を見られるとは……。 「あれ見てね、この人は遠い国から私の前に現れた王子様かと思ったの」 「何をどう見たらそう思えるの?」  肉まん頬張ってる顔が王子様なんて、やっぱり櫻葉さんはちょっと変わってる。  クスクス笑う櫻葉さん。その笑顔を見るのも僕の楽しみだった。  やがてクスクス笑うのをやめた櫻葉さんが今度は僕にいたずらっぽい笑みを浮かべた。 「ねえ、柳野くん」 「何?」 「柳野くんは夜の三日月って何に見える?」
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