月夜に見つけた王子様

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 学校を出て、僕は彼女の手を引いて歩く。  今はもう十一月。暗くなるのが早くなった。  隣の櫻葉さんを見る。僕らは一緒に過ごした時間は短いけれど、こんなにも彼女のことが自分の中で膨らんでいたことに初めて気がついた。  僕はまた、頭の引き出しを開いてみる。さっきの新品の辞書はポイとした。そんなものより、彼女との思い出が詰まったアルバムを沢山残しておきたかった。 「ねえ、どこに行くの?」 「どこに行きたい?」  僕は自分では考えつかない。ただ彼女が喜ぶことをしたいだけ。だから彼女が地球の裏側に行きたいと言ったら僕は何年かかったって、連れていきたいと思う。想像の世界だけで物足りなかったら、僕が君の想像を現実にしてあげたい。 「……ねえ、だったら公園に行って」 「公園?」 「うん、公園がいいわ。柳野くんが肉まんを美味しそうに頬張ってた公園ね」 「……了解」  僕らは、まだ僕らが出会う前の公園へ。
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