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僕らは公園に来た。
もう辺りは暗くなった。人はほとんど見えなかった。
僕らは公園の端にあるベンチに座った。この辺りには誰もいない。
櫻葉さんが、感慨深そうに一息漏らした。
「懐かしいわあ……」
「そう?」
「うん。ふふ、ありがとう柳野くん」
彼女が僕に笑顔を見せると、視線を少し落とした。僕らはまだ手を繋いだままだった。少しでも君との思い出を残しておきたかった。手にも刻みつけておきたかった。
「手なんか繋いだことなかったのにね」
「あ、ご、ごめん……」
僕が慌てて離そうとしたら、逆に強く握り返された。まるで離すなと言うように。
「いいの。このままで」
「……そう」
僕らは結局手を繋いだまま。考えてみればおかしなことだ。僕らは別に付き合ってるわけではないのに。気持ちを伝えたこともない。
だけどこうしていると、何故だかこうすることが当たり前みたいに思えた。
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