4.決してこれは嫉妬じゃないけど

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「ならこっちのドレスはどうかな」 「大人っぽすぎる気が……」  私の瞳の色に合わせた真っ赤のドレスや、黒の髪が映える淡い色のドレスを私にあてがっては楽しそうに笑うメルヴィ。  色々な色形のドレスを何着も出され、されるがままだった私はあることに気が付いた。 「紺色はないんですか?」 「え……」  他の濃い色や淡い水色はあるのに、濃い青だけがないことに違和感を覚えてそのまま口にする。  私の質問を受けたメルヴィは、一瞬だけぽかんとした表情になって。 「紺は、俺の色だからね。軽率に誰かが着ないよう衣装室からは外されているんだ」 「あ……」  どこか寂しそうにそう呟かれ、ハッとする。 “そうか、王家の色のドレスになるから――”  王家側が用意した王家の色のドレス。  それが例えハプニングで着替えることになっただけだとしても、勘繰る人はいるだろう。  違うとわかっていてもそこを利用しようとする人がいる可能性もある。 “確かにここにあったら着たがる令嬢も多いわよね”  考えてみれば当たり前なのだが、だがその当たり前がなんだか少し面白くなくて、気付けば私は視線を落としていた。
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