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いや、離れようとした。だけど……
見慣れないものが、私の左手にあって。
太陽の光を受けてキラキラ光る物から、目が離せなかった。
「あの、勇運くん……コレは……」
「……指輪」
「えぇ⁉」
そう。私の左手の薬指に、指輪がはまっていたのだ。しかも、キラキラのストーンがついていて……。
え、でも……、どうして指輪?
「入院している間、ずっと冬音のことを考えていた」
「私のこと……?」
驚く私に、勇運くんは私の手をとり、立ち上がる。私が立ちあがっても手は離さず、そのまま話を続けた。
「最初、冬音への気持ちは、秘密にしようと思ってたんだ。小さな弟がいるお前を、どうしたって好きになれないって……そう思ってたから」
「勇運くん……」
「だけど、俺の止まった時間を、冬音が進めてくれた。冬音がいなければ、俺はまだ過去から動けないでいた。お前が、俺を変えてくれたんだ」
「……っ」
ギュッ
勇運くんは、私の手を握る力を、さらに強めた。
冬の寒さなんて関係なく、沸騰でもしてるかのような。そんな熱を持った、勇運くんの大きな手。
「そんなお前を前に、ずっと気持ちを隠し続けるのは……ムリだった。だから、改めて伝えたい。
冬音の事が好き。
俺と、付き合ってください」
「勇運くん……」
まるでお辞儀をするように、私に向かって目を閉じた勇運くん。少しの時間を置いて、ゆっくりと瞼を開ける。
「お前と出会えて、俺も……そして兄貴も救われた。幸せだよ。俺たち兄弟は、幸運だ」
「っ、……」
その時、お父さんのお墓が目に入る。
「一葉家の墓」――と掘られた文字を見て……ふと、ある事を思った。
「私の苗字……覚えてる?」
「忘れるかよ、”三石”」
「ふふ、うん。そう」
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