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クリスマスの誓い
それから――
勇運くんは退院し、いつも通りの日常が戻って来た。
守人さんと柴さんのケガは早くに治り、勇運くんとがれきに閉じ込められた連くんも、病院で検査を受けるも問題なしで、すでに夏海と保育園で毎日遊んでいる。
事故が無事に収束し、いよいよ世間はクリスマス。街のいたるところが騒がしく、にぎやかに色めき立っている。
そんなクリスマス、当日。
勇運くんと二人で、とある場所にきていた。
そこは――
「初めまして、勇運くんのお父さん。三石冬音です」
勇運くんと守人さんのお父さんが、眠る場所。
退院後、勇運くんから「クリスマスの日」について聞かれた。
『どこか行きたい場所ないか? パーッと、どこか行こう』
『あ、じゃあ……』
そこで、私が「勇運くんのお父さんに会いたい」と言ったわけだ。
「何もクリスマスに来なくったって……」
と、少し不満げな勇運くん。彼としては、もう少しパーッと出来るところが良かったみたい。
だけど、今しかないと思ったの。今、この瞬間に会っておきたいって。
「それに、勇運くんも言ってたでしょ? お墓参りしたいって。お父さんと話したいって」
「う……」
観念したのか、私が座る隣へ、同じようにスッと膝を曲げる勇運くん。
だけど、お父さんへ手を合わせた後……勇運くんは、素早く私へ向き直った。
「冬音」
「待って、もう少し」
「……」
まだ目を瞑ってお父さんとお話ししている私を、勇運くんはしばらく黙って見る。
だけど、あまりにも長すぎたのか……
「時間切れ」
そう言って、私の左手をグイと引っ張った。
「わ、わわ」
急に体のバランスが崩れ、倒れそうになる。だけど、勇運くんがボスンと。私の体ごと抱きしめた。
「ありがとう」と言って、勇運くんから離れる。
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