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早朝の団地の雰囲気は夜と違いどこかミステリアスだ。
夜はどの部屋にも明かりが灯っていて幸せで穏やかな家庭を想像することができるが、パートナーを見送った後の団地は妙に静かで、些か不気味さを感じる。
出張先から戻ってきた優一郎は、そんな静まり返った朝の団地の階段をゆっくりと登っていく。
自分の部屋の前に来ると、ポケットから鍵をだして扉を開けた。
慣れ親しんだ光景とにおいに、体のどこかからふっと力が抜ける。
たった数日帰ってなかっただけで、こんなにも恋しくなっていたとは…
首からネクタイを引き抜くと、優一郎は妻の姿を探した。
ところが、リビングに人影は見当たらない。
代わりにキッチンで味噌の入ってない味噌汁の作りかけと、器に割っただけの卵を見つけた。
優一郎は小さくため息をつくと、廊下の奥の方へ視線を向ける。
「全く仕方のないやつだ」
呆れ気味に呟くと、視線の先にある部屋へと向かった。
そこは、夫夫の寝室…ではなく、息子優希の部屋だった。
「優希、入るぞ」
優一郎はノックの代わりに声をかけると扉を開く。
すると、すぐにベッドの上でもつれあう二人の姿が目に飛び込んできた。
うつ伏せになった凪沙の背後から、優希がガツガツと腰をぶつけている。
「は…ああっ…ぁ、ゆうき…くんっ…あっ、もう…おれ…しんじゃうぅっ…」
甘ったるい嬌声とともに、ベッドがギシギシと軋んだ音を立てている。
繋がっている部分はよく見えないが、シーツの乱れ具合いと部屋にこもったにおいから、さっきはじめたばかりとは思えない状態だ。
「このくらいじゃ死にませんよ。ほら、もっと奥までくわえて。俺がこんなぬるい刺激じゃイケないの知ってるでしょ」
優希はそう言うと、凪沙の腰を掴み更に強く腰を押しつけた。
ぶちゅうと結合部から卑猥な音がなり、凪沙は狂ったように泣き叫ぶ。
「あふっ…くうぅっ…でもっ、ごはん…っ…ごはんつくらなきゃぁ…ああっ」
「ごはん?そんなものより愛を深める事の方が大切でしょ?だって俺たち、家族なんですから」
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