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BL団地妻〜背徳の家族愛〜
ピピッと耳元で鳴り出したスマホのアラームを、岩瀬凪沙は凄まじい反射神経で止めた。
寝ぼけまなこで画面を見ると、「AM6:00」の文字が起床時刻を告げている。
起きなくては…
凪沙はまだもやがかっている頭の中で呟いた。
だが、どうにもからだが重くてなかなか起き上がることができない。
「は〜…っ…ねむい…」
小さく嘆くと凪沙は頭から布団を被った。
心地の良いまどろみが再び夢の中へ誘いだす。
このまま二度寝ができたらどんなに幸せだろうか。
何も考えずに目が覚めるまでダラダラできたらどんなにいいか。
そんな事が普通にできていた日々が懐かしくて羨ましくなる。
布団の中で2、3分ほどぐずぐずしていたが、いつまでもそうしていられないと覚悟を決めて凪沙は起き上がった。
ベッド脇のサイドテーブルに置いておいたエプロンを寝巻きの上からつけるといくらか気合いが入る。
これからまた慌ただしい一日がはじまる。
今朝の朝食は和食にしようと決めていた。
米はタイマーにして炊いてある。
あとは買っておいた鮭を焼いて、味噌汁を作って…納豆とあと一品は…
頭の中で献立を考えていると、不意に臀部に何かが触れた。
さわさわと表面を撫でまわしていたそれは、今度は柔らかな膨らみを確かめるような触り方へと変わっていく。
凪沙は小さくため息を吐くと振り向いた。
「おはようございます先生」
枕につけた肘に頭を預け、片手で器用に凪沙の尻を揉んでいた男の眉がぴくりと上がった。
ついでに尻を揉む手にも力が込められる。
「こら、もう僕は君の先生じゃないだろう?愛する夫なんだから下の名前で呼んでほしいって言ってるじゃないか」
男はそう言うとふ、と微笑んだ。
彫りが深く精悍でいかにも男らしい顔立ちだが、笑った時に目尻にできる無数のシワが男の物腰の柔らかさを表している。
その表情に凪沙は弱い。
「ほら、凪沙。もう一度挨拶からだよ」
男はそう言うと、まだ温もりのある布団の中へ凪沙を引き摺り込んだ。
吐息を感じるほどの距離で見つめられ、ほら、と催促される。
じわりと熱くなる顔を隠すように俯くと凪沙は渋々口を開いた。
「おはようございます…ゆ、優一郎さん…」
「おはよう。凪沙は今日もかわいいね」
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