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優一郎が出張に出かける日はあっという間にやってきた。
彼を見送った後の玄関先で凪沙は小さくため息を吐く。
優一郎は何も心配してないという感じだったが、凪沙は少し不安だった。
優一郎がいない間、もしかしたら優希が凪沙にこれまでの鬱憤をぶつけてくるかもしれないと思っているからだ。
もちろん、優希はそんな事はしない子だと信じている。
愛する夫が持っている優しい遺伝子だって継いでいるのだ。
それに優一郎だって言っていた。
彼はもう子どもじゃないんだからと。
もし万が一、優希が嫌がらせのようなことをしてきたり言ってきたりしても、心構えさえしていれば大丈夫。
感情的にならず大人の対応をすればいいだけのこと。
「そうだよ、問題ないって」
凪沙は不安を拭うように自分に言い聞かせる。
気を取り直して、家事に専念しよう。
そう思ってキッチンに戻ろうとした時。
いつからいたのか、玄関とリビングを繋ぐ扉の前に優希が立っていた。
「わっ!!」
気配に全く気づかなかった凪沙は驚き、思わず声をあげてしまう。
「あの…ちょっといいですか」
優希は今にも飛び出してきそうな心臓を必死に飲み込んでいる凪沙に話しかけてきた。
いつもは二人きりでも滅多に話しかけてこない優希。
優一郎が出かけてまだ間もないが早速来たか。
凪沙は頭の中でファイティングポーズをとる。
来い、どんな嫌味でも軽くかわしてやる。
「昨日の夕食に出たハンバーグのことなんですけど…」
まずは食事の文句というわけか。
確かにそこならディスりやすいし、また凪沙へのダメージも確実に与えられる。
しかし凪沙は心構えができている。
残念だったね優希くん。
俺はそんな事じゃ傷つかないよ、多分。
「あれ、すごく美味しかったんで今夜もリクエストしていいですか?」
「………え?」

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