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「ゴメンネ。違う人が好きなんだ」
なんだかシイくんは納得した顔をしている。
「そうか。やっぱり負けたな」
どうやら私の恋の相手はわかっていたみたいだ。
「おい。告白しないと、お前らには時間がないぞ」
「わかってる。でも、言えないよ。きっとこの恋は哀しく終わる」
「それはお前が決めること。でも、勿体ないな」
ネズミの語ってるのは最もで、やがて高校を卒業して一年班の仲間の別れになる。
もう四人で親友と呼べる。今日はみんなとの別れの日。告白をするのなら最後のチャンス。
「ナーちゃん。あたしのことを忘れないでねー」
一番泣いているのは、ユウちゃん。柄にないかもしれないけれど、彼女はそんな人。
「元気でね」
そして私が振ったシイくんはあれからも優しい。
残りのヤンくんはいつも通りの無口さん。照れているみたいで、やっぱり好きだと思った。でも、言えない。
私はみんなに別れを告げ電車で旅立つ。
「本当に言わなくて良いのか?」
「うるさいよ」
「どうするべきかわかってるだろ?」
「心の傷を負うの」
座席に座ってネズミと言葉を交わす。こんなのもこれまでなのかもしれない。高校時代の幻想は消えてしまうだろう。
電車が動き始める。ユウちゃんが涙を流してる。そしてシイくんがヤンくんの背中を叩いた。
ヤンくんが走り始めた。
「俺、ナーちゃんが好きなんだ!」
風の音が強くなるけど、普段静かなヤンくんが叫んでるのがわかる。
「私も、君のことが好きだよ」
彼に見えるように手を振る。離れる笑顔の彼。そして私の涙。ネズミはこの時を待っていたんだろう。
「一件落着」
語られた姿はもうなくなっている幻はそこに確か居たから。
おわり
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