6.彼女も私を恨んでいる?

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6.彼女も私を恨んでいる?

「本当に、美味しいですね。こんな美味しい坦々麺生まれて初めて食べます!」  鈴木さんは嬉しそうに坦々麺を啜っている。  彼女には私にはない愛嬌があり、博貴が惹かれたのもわかる気がした。 私も、前回は入社してしばらくの間は意識して教育係の博貴に愛想を振り撒いていた。  今は冷たくしているから、彼は私に惹かれず最初から鈴木さんと結ばれてくれるかもしれない。 「末永さんの教育係の桜井博貴さんってかっこよくないですか? 爽やかでデキル男って感じがして!」  鈴木さんはどうやら最初から博貴に興味があったようだ。  それならば、最初から彼女と博貴をくっつけてしまった方が良さそうだ。  実際の結婚生活での彼はそこまで爽やかでもなければデキル男でもなかった。  年収の高さでお互いの家事比率を決めると最初に決めたのは彼だった。  最初は私の方が家事比率が高かったが、博貴が退職して起業してからは逆転した。  そして彼は、宝くじが当たってからは私の生活は変えないように言いながら自分の生活は派手に変えていた。 「アプローチしてみたらいかがですか? 桜井さんは、鈴木さんみたいな女性らしく気配りのできる方が好きだと思います」  私は本気で彼女にアドバイスをすることにした。  実際、博貴は私に対して女らしさや気配りが足りないとよく指摘してきた。 「アプローチなんてできないですよ」  鈴木さんが恥ずかしそうにモジモジしてきた。 「ババンシーのスーパーマリンつけてみたらどうですか? 桜井さんがつけている香水です。同じ香水つけると気があるというアプローチになったりするみたいですよ」  私は前回、誕生日に博貴が自分と同じ香水をプレゼントしてきたのを思い出した。  「俺色に私を染め上げたい」とか臭いことを言いながらプレゼントされ喜んでつけていたが、今となっては気持ち悪い。 「そんな意味があるんですか? 末永さんて物知りなんですね。流石、女性なのに大手総合商社の総合職で就職できるだけありますね」  末永さんの言う通り、一般的に男性より女性の方が能力がなければ同職にはつけない。  私の場合は能力があったと言うより、面接官の巡り合わせが良かっただけだ。  実際、他の商社は全て落ちている。  でも、それを言っても結局は派遣を見下す正社員の意見だととられてしまうかもしれない。  前回、私の意思とは真逆に彼女にお高くとまった嫌な女だと思われたのが納得がいかない。  言動には細心の注意を払った方が良いだろう。 「鈴木さんだって、業界最大手の菱紅物産で働いていたんですよね。その時の話聞かせてください。三ツ川商事より少しお堅いイメージですよね」 「そうですね。ここだけの話、三ツ川商事は情報管理もゆるくて少し心配になることありますね。菱紅物産の契約が切られた時はショックでしたが、三ツ川商事の緩い感じの方が働くには楽です」  鈴木さんは契約満了につき、三ツ川商事に来たと聞いていたが本人は切られたと認識してそうだ。 「本当に社員が羨ましいです。3ヶ月ごとに契約を切られるんじゃないかと、いつもお腹が痛くなるんですよ。もう、いっそ寿退社で永久就職して安定を手に入れたいです」  鈴木さんが私に憎しみを抱いた理由がわかる気がした。  私は彼女の興味があった男と結婚し、正社員の座も持っていた。  そして、回帰前に田中室長から彼女の仕事ぶりを聞かれた時にこう答えた。 「鈴木さんは仕事は迅速で丁寧ですよね。でも、私はそもそも派遣の事務はいらないと思います。次の会社で情報漏らされるリスクがあるじゃないですか」  私の発言が元で前回彼女が職場を去った可能性がある。
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