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朝起きて鞄や干された洗濯物を探したけど、指輪は見つからなかった。 外で落としてしまったんだろうか。 結婚式も新婚旅行もそこそこでいいから、好きに作らせて欲しいと美嘉がこだわった結婚指輪。 普段あまりワガママを言わないから珍しいと思って、もちろん喜んで任せた。 もう同じものは作れない。 失ってしまって申し訳ない気持ちと、美嘉が指輪を外した理由を聞くのにどうやって切り出そうかと考えていた。 瑛士が遊びに行くとすぐに美嘉から話しかけてきた。 脱衣所で拾ったと、指輪を返してきた。 僕はビックリしてポカンとしてしまった。 そして慌てて自分が拾った指輪も返した。 やっぱり浮気も疑っていたようだけど、理由を話したら文句も言わずにすぐに信じてくれた。 僕は浮気できるほどモテないよ。 でも泣くほど心配だったらしい。 そして『疑ってごめんなさい。』と首にしがみついたまま謝ってきた。 違うんだ。 指輪を返さなかったのも疑ったのも、お互いさまなんだ。 美嘉はいつも自分の気持ちをあまり考えずに真っ直ぐにぶつけてくる。 僕はいつも先に頭で考えて気持ちの表現が小さくなってしまう。 そんな僕を笑って許してきてくれたけど、我慢できなくなる日が来るかもしれない。 昨日自分の中に見つけた情熱を素直に伝えなければならない。 『僕も美嘉のことを疑った。 陶芸教室の先生かイケメンだと言っていたから…。 その先生の為に指輪を外して行ったのかと。』 『…え?!そうなの?! 陶芸教室で作品に指輪の跡がついたら嫌だなと思って頑張って外して行ったの。』 美嘉が僕の顔を見ようとしたが、見られるのは恥ずかしいので背中に回した手でガッチリ抱きしめて振り向けないようにした。 美嘉はそれに気が付いて、ふふふと笑った。 『正博も…ヤキモチ焼いてくれたの? いつも冷静なのに珍しい。』 『そりゃね。 美嘉も太って指輪外れないって言ってたのに外してたから。 僕が愛想を尽かされるところはたくさんあるだろうし。 美嘉は可愛いから心配だった。』 『うわぁ、なんか正博から直球で言われると恥ずかしい! …私が嫌になるわけないじゃない…。』 『…僕も嫌になるわけがない。』 …ああ、ちゃんと言えた。
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