第四十七話 嘘

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「じゃあ、おれ! いちごとミルクのタブル!」といつもの活気な声で、祐介にアイスの要望をした。 「…………」  目の前の信号が青に切り替わると、車が動き出す。  陽向はうきうきした気分で鼻歌を歌っているが、祐介はさっき見せた表情が作り笑顔だということを見逃さなかった。   ✿ ✿ ✿  車内を出ると、外はひんやりとした空気に包まれていた。  夏の厳しい日照りが続いたせいか、大地に(うるお)いを与えるように雨の降ることが多くなった。  上を見上げれば、灰色の涼しい曇り空の天候が続いている。 「お待たせ」  アイス屋で二人分のアイスを購入した祐介は、近くの公園のベンチに腰掛ける陽向の前まで戻って来た。 「待ってました~!」  陽向は早く頂戴(ちょうだい)と言わんばかりに、祐介から自分が要望したアイスを受け取ると、すぐにかぶりつく。  陽向の一口一口が異様に早く、程無くして手にしていたアイスがなくなった。 「ん~! うまい!」 「食べるの早いな……」  幸せそうにアイスを口にする陽向の隣に祐介も腰掛けると、購入したアイスを口にする。 「ユウは何にしたの?」 「コーヒーとバニラのダブル」  そう言って、祐介は二種類の味を組み合わせたアイスを(かか)げる。
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