22人が本棚に入れています
本棚に追加
「一口ちょうだい!」
「仕方ないな……ほら」
「あー……ん⁉︎」
陽向は期待な笑みで大口を開けた途端、祐介は伸ばした手を引っ込め、アイスを頬張った。
「ん……コーヒーの苦味とバニラの甘さがマッチしてる」
「ユウ、性格悪いぞ!」
悪戯っぽく笑う祐介に、陽向は膨れっ面になる。
「あ、おい」
祐介は次の一口を口に運ぼうとした時、陽向は祐介のアイスを持つ手を掴み、隙をついて頬張った。
「一口でかいぞ」
「さっきのおかえし~」
ニシシッと陽向は仕返しとばかりに笑うと、祐介は「たく……」と微苦笑を浮かべる。
「ねぇ、ユウ……」
陽向の声が憂いを帯びる。
「何だ?」
「……ごめんね。おれに気を遣ってくれたんだよね……。決行の日だから、不安でいっぱいでさ……」
「今までと違う戦闘になるからな……俺だって不安だ」
「あはは……不安になってるのは、おれだけじゃないよね」
「陽向」
陽向が苦笑を浮かべると、不意に祐介が真剣な声で名前を呼んだ。
「何?」
「お前、『本当』は何が不安なんだ?」
「……! え? ユウ、何言ってるの?」
「ごまかすな……夕凪の件もそうだけど、同時に何かを隠していることに俺が気づいていないと思ってたか?」
「…………」
見透かすような視線が突き刺さり、陽向は戸惑いの表情を浮かべた。
最初のコメントを投稿しよう!