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「陽向を責めているわけじゃない。ただ……陽向が何を思っているのか聞きたいんだ。話してくれるか……?」
沈黙が流れた。
「そうだね……ユウの言う通りだよ。おれが不安になっているのは、夕凪のことだけじゃないんだ……」
陽向は観念したように溜め息を吐いた。
彼の表情は車内で窓の景色を眺めていた時と同じで、どこか憂いを帯びていた。
そして、視線を地面に落としたまま震える声を発する。
「ユウ……ごめん。おれ、ユウたちに嘘吐いてたんだ……」
「嘘?」
勇気を振り絞って一歩踏み出した言葉は、祐介が予想もしないものだった。
陽向が祐介たちにどんな嘘を吐いたのかは不明だが、彼が辛い思いを抱いてまで必要なことだったのだろうと祐介は大方悟った。
「おれさ……」
陽向は膝の上で両拳をギュッと握り締め、話を切り出そうとした時だった。
朝方なのに突然辺りが暗くなり、頭上に流れていた灰色の雲が黒く渦状に歪んだ。
「――やあ、また会ったね」
祐介と陽向は驚きに見開いた目で顔を上げた。
「っ!」
闇が濃くなった広場の中央から何者かが二人の方へ歩いて来る。
渦状に黒く固まった雲から鼓膜を揺らすような雷が鳴り響いた途端、眩しいくらいの青白い雷光が走った。
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