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「わたしが、呂老師や父から聞いた、最初に稔った金の李を巡る話は、今、お聞かせしたとおりです。
ひと月前、再び花が咲き、金の李がなりました。風が強い日は、実が落ちてくるのではないかと、崖の下に人が集まることもあります。どうしても李を手に入れたいと思った者が、岩棚に上ろうとして酷い目に遭いました。
あんな木は、切ってしまった方がいいのです。しかし、岩棚に近づくことが難しいので、それすらもできません」
これほどの災いをもたらす金の李は、夏先生の推察通り、天空花園から落ちた種核から育ったものに間違いないだろう。
早く天水をかけて、天へ戻してやるべきなのだけれど、どうやってあの岩棚へ行けばいいのだろうか――。
夏先生のような蛙なら、時間をかければ上れるかもしれないけれどね。
蛙をうらやましいと思うのは、これで三回目――かな?
しかたない。雅文に会ったら、あれを持ってこられるかきいてみよう!
突然、たくさんの蹄の音が聞こえてきた。
里の前の広い道から、馬に乗った私兵風の一団が李畑に近づいてくる。
兵たちに囲まれるようにして、馬車も一台走ってきた。
李畑の入り口まで来ると、一団はぴたりと止まった。
「友德! なぜ、黙っていたのだ!? 新たな金の李が稔ったというではないか! もしや、わたしに内緒で、自分のものにするつもりだったのか!?」
上等な衣をまとった若い男の人が、馬車を降りるや否や、わたしたちに近づいてきて、友德様にくってかかった。
だ、誰なの、この人!?
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