その六 思阿さんの出世を邪魔するつもりはありません! でもね……。

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 三人とも照れ笑いを浮かべ黙ってしまった。でも、この沈黙は気まずい。  わたしは急いで、気になっていたことを友德様に尋ねてみた。   「あの、思阿さんが、金の李を射落としてしまいましたけど、良かったのでしょうか? 偉強様は、たいそう喜んでいましたけれど、あれには、あまり関わらない方がいいのかなと思っていたものですから」 「射落としていただいて、感謝しています。兄は、どうしても金の李を手に入れるつもりでここへ来たようでした。もし、射落とせなければ、崖の上から籠で人を下ろしたり、足場を組んで人を上らせたりすることになったでしょう。 そうなれば、また、死人や怪我人が出たかもしれません。思阿さんのおかげで、そうならずにすんだのです。ありがとうございました」  そう言って、友德様は、わたしたちに頭を下げた。  これでしばらくの間は、誰かが金の李に惑わされ、無茶をすることもないだろう。  だが、いつかまた蕾がつき花が咲く。そして、新たな金の李がなる――。  そうなる前に、あの李の木を始末するのが、わたしの役目なのだけど……。  思わず小さな溜息をつくと、友德様が明るい声をかけてきた。 「よろしければ、今夜は、(ルウ)老師の家にお泊まりになりませんか? 以前は、もっと書生がたくさんいたこともあるので、離れの部屋もあります。わたしも泊まるつもりですので、一緒に晩餐でもいかがですか? 昭羽(チャオユウ)は、なかなか料理上手なのですよ」 「ありがたいお話ですけれど、そんなこと、勝手に友德様が決めてしまってもいいのですか? 呂老師が、お許しくださらないかもしれませんよね?」 「それは、大丈夫です」  えっ? 大丈夫? どういうことかしら? そう言えば友德様と呂老師って――。  友德様が、愉快そうに笑いながら、わたしに理由を教えてくれた。 「呂老師は、わたしの祖父です。わたしの母は、呂老師の娘なのですよ」  ◇ ◇ ◇
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