向き合う時

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一階に降りてキッチンを覗くと、やっぱり焼きそばを作っていた。 「お母さん、焼きそば作ってる?」 「あら、寝てなかったの?」 フライパンを振りながら母親が言った。 「寝ようとしてたら、焼きそばの匂いがするんだもん。お腹が空いちゃったから起きたわ」 「お腹は正直ね。もうできるから座って待ってなさい」 「うん」 箸とお茶を用意してこの家での私の指定席に座る。 模様替えが好きな母親は、帰省の度に部屋を模様替えして変えていたけれど、今回は冬支度のこたつが出されているだけで、これといった大きな変化はなかった。 「模様替えはしないの?」 「もう疲れちゃって、やらなかったのよ。力もなくなってきたしね。別に汚いわけじゃないし、ただの趣味だっただけだからね」 テーブルに焼きそばが盛られた皿を置いて、向かい合わせに座る。 「おいしそう、いただきます」 「いただきます」 箸でたくさんの麺を掴んで大きく口を開けて食べる。 「そんなに沢山一度に入れたら、詰まるわよ」 口の中に焼きそばがいっぱいで、答えることができずに頷く。いつも鳥がエサをつつくようにして食べているせいか、口の中に食べ物が一杯になるのが嬉しい。 「夜ごはんが食べられなくなるわよ。智花の誕生日で沢山つくる予定なんだから」 「大丈夫よ焼きそばくらい沢山食べたって」 「からあげでしょ? ホールのケーキにサラダ、クラムチャウダーとグラタン。全部智花が好きなものよ」 「ほんとう? うれしい」 私は好き嫌いなくなんでも食べる。というか、この母親が好き嫌いを許さず、食べさせられたからかもしれないけど、味の好き嫌いはあっても、それでも食べる。 その中でも母親が言った料理は、私の大好きなものだ。 「太っちゃうかも」 「少し太りなさい。痩せすぎよ? お母さんは太っていく一方なのに。見てよ、このお腹の肉」 母親はお腹の肉をつまんで見せた。更年期と中年で何をやっても痩せないというのが、今の母親の悩みだ。そんな母親と顔を見合わせて笑う。 「あ、そうそう、この間押し入れを整理してたら、智花のアルバムが出てきたの。見てみなさいよ、和室に置いてあるから」 「アルバム……うん、わかった」 昼食を食べてコーヒーを入れ、和室に行くと、アルバムが置いてあった。
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