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「過呼吸になったのは中学生の時からと聞いたけど、きっかけは?」
「……」
「……辛い過去と向き合わなくちゃいけないなら、言わなくていいわ。ここは病院でもないし、言う義務もないから。でもね白石さん、過呼吸症候群は何度も繰り返されてしまうから、我慢しないで、ここへ来てくれるかしら? 少し話すと気分も違うと思うし、ね?」
私は未だに、悪夢を見て不眠になる。あの時の出来事がフラッシュバックして眠れなくなるし、呼吸が苦しくなる。
過呼吸にまでなることは大人になってから少なくなっていて、最近はなかったので少し安心していた。
この苦しみがなくなるのは、自分の人生や全てを作り変えないと無理だと思っている。
過去が変えられないなら、未来は自分の手で変えてみせる。そうしたら、普通の女性として残りの人生を楽しく生きることが出来ると信じている。
辛い過去と向き合うのはごめんだし、克服もしたくない。頑固者だと思われても仕方がないけど、此処には来たくない。
「あら、休憩が終わるわね。今日は来てくれてありがとう。ドアの前に診察中とライトが点いているときは、患者さんがいるときなんだけど、それ以外はいつでも来てね」
「はい」
「それと……白石さん、ここにはね、白石さん以外にも悩みを抱えている人が来るのよ。白石さんだけじゃないわ、だから一人だと思わないで。私も一人でここにいるから話し相手になってくれると嬉しいわ。だから診察と思わないで気楽に来てほしいの」
「……はい」
私以外にも……ね。悩みや辛い経験をしたことがない人はいないと思う。その大きさは人それぞれだけど、少なくとも私は、死にたいほどの辛さだった。
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