唇から始まる、恋の予感

失った日常

「白石さん、部長の歓迎会をやるので、メールでお知らせを作ってください。場所や会費、時間はこちらです」
「かしこまりました」

係長から受け取ったメモによると、開催日は金曜日で、時間は１８時から。我が社のリフレッシュコーナーでやるようだ。大所帯の海外事業部は、歓送迎会をやるときは、幹事が場所選びに毎回苦労していた。
今回はリフレッシュコーナーということだけど、でもその場所は役員しか利用できないはず。部長だから利用許可が下りたのかもしれない。

（まあいいわ、私が気にすることじゃないし）

料理は食堂のケータリング、お酒はある程度買って、あとはリフレッシュコーナーのお酒を飲むと書いてある。役員専用のリフレッシュコーナーはバーカウンターがあってお酒が飲めるのだ。
接待などで使ったりするかららしいけど、高そうなお酒がおいてあると噂で聞いたことがある。
幹事は新入社員が担当する決まりだけど、きっと緊張しているに違いない。
昼のチャイムが鳴り、お弁当を持って私のオアシスに行く。
ランチには、朝に行くリフレッシュコーナーを使う。ここはテーブルがなく、ソファと数個の椅子、自販機しかないから、ランチに使う人は滅多にいない。ずっとこの場所で昼休憩をとっているけど、数人しか遭遇したことがない。