第一章 支配者クロノスの栄光

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 ゼウスが次に目を付けたのは掟の女神テミス。ゼウスからすれば叔母にあたる女神である。 「テミスおばさん」 「あらゼウス、久しぶりね。どうしたの」 「私の子を生んでほしい」 「え…… あたしまだ貴方のことよく知らないのに」 「いいからいいから」 「ああ、こんな昼間から、空からヘリオスが見てるわ」 「見せつけてやればいい」  ヘリオスは大地の周りを動く太陽の概念そのものの神である。ヘリオスは大地での事象は全て見通すことが出来る。ゼウスとテミスの交わりを嫌と言うほどに見せつけられるのであった……  「白昼堂々なにやってるんだあいつらは……」 ヘリオスはやれやれと言った感じに交わる二人を眺めるのであった。  テミスは二組の三姉妹を産み落とした。まずはホーラの三女神、名前はそれぞれ、春の女神エイレネ(平和)夏の女神エウノミア(秩序)秋の女神ディケ(正義)この三柱の女神が生まれたことにより大地に春夏秋が巡り回る「季節」が生まれた。この女神たちは天界、オリュンポス山と地上を隔てる雲の番人でもある。  次に生まれたのはグライアイ三姉妹と同じく年老いた老婆の三姉妹でモイラの三女神、名前はそれぞれ、生命の糸を紡ぐクロト、その長さを計るラケシス、その糸を断ち切るアトロポス。この三柱の女神が生まれたことにより生命の誕生から死までの概念が生まれたのである。  ゼウスの兄、ポセイドンもティターン神族の穏やかなる海の老人ネーレウスが生んだ海のニンフの一人アンピトリテと結ばれていた。ポセイドンはティターン神族の中から性格の優しい海のティターン神族と結びつく道を選んだのである。そして間もなくにトリトンと名付けられた下半身が魚の息子までも儲けた。これにより、オリュンポス神族とネーレウスらのような海のティターン神族と繋がり(パイプ)が出来たのだった。  ゼウスはそれにより、海の女神エウリュノメと出会い、またもやロクに話もせずに交わり子を成すのであった。 エウリュノメとの間に生まれた女神はカリス。アグライア(輝き)、エウプロシュネ(歓喜)タリア(繁栄)の三女神、彼女達は美そのもので、まさに神の恵みそのものの概念達と言えた。
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