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ガイアはティターン十二神を生み出した後、異形の子たちをも生み出した。
三人のサイクロプス。卓越した鍛冶錬成技術を持った単眼の巨人たちである。サイクロプスと言う名前の意味は「丸い目をした単眼」である。元々は初期ギリシャ文明にいた青銅鍛冶集団の名前とされている。単眼であったのは青銅加工の際に飛び散る火花から片目を守るために塞いでいたことからだとされている。
名前はそれぞれ、プロンテース(雷鳴)ステロペース(稲妻)アルゲース(閃光)と言う。
三人のヘカトンケイル。五十頭百手をもつ巨人たちである。名前はそのまま百の手。
名前はそれぞれ、コットス(怒り)ブリアエオス(大きな手足を持つもの)ギュゲス(活力)と言う。
これまでの十二神は自分と同じ形をしていたのに、次に生まれたのは異形の子たち。彼らの父であるウラノスは彼らを忌み嫌い排除を決意したのだった。しかし、母ガイアは異形の子であろうと自らの血と肉と骨を分け与え給うた我が子、先に生んだ十二神と共に愛し、育もうと心に誓っていた。
夫婦の方針は真逆、異形の子達の処遇で絶え間ない口論が続いていた。二柱の意見は平行線、このままでは埒が明かないと、ウラノスは排除を強行したのだった。
妻、ガイアの体そのものである大地、そこ一つだけ開いたタルタロスへの大穴。なんと、ウラノスは異形の子達をその大穴に放り捨ててしまったのだ。
我が子を捨てると言う許されざる行為であるが、後に孫娘も同じことを行うところ「血筋」が為せるのだろうか。
母であるガイアは子供を助けられず、守れなかった悲しみから岩の枕を濡らし目を泣き腫らした。
そして、幾度も体を重ねた夫でありながら我が子であるウラノスを許せずにいた。
悲しみは怒りへと姿を変えた。
「何者にも征服されない刃でウラノスを斬る!」
ガイアの決意は自らの大地に眠る鉄鉱石を掘り起こし、溶かされ、湾曲した刃の形となった。そして、悲しみの涙で冷やされ固まり、鉄の鎌となった。
これこそが「アダマスの鎌」である。今の基準にしてみれば単なる鉄であるが、ヘシオドスがギリシャ神話の創世記たる神統記を書いた当時には全てを切り裂き、何者にも征服されない為の守護武器の材質として鉄は絶対的な存在だった。
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