第一章 支配者クロノスの栄光

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 時が流れたある日、オトリュス山の麓で暮らすティターン神族皆に聞こえる大きな声が響いてきた。 「我はクロノス! この地上の統治者である!」 はいはい、元統治者が何か喚いてるよ。ティターン神族は皆クロノスの言葉に耳を傾けなかった。 「貴様達の娘は続々とゼウスに言い寄られていると聞く! このままでは愛する娘がゼウスの手篭めにされてしまうぞ! これでいいのか! 血と肉と骨を分け与えし愛する娘があのような淫らな神の慰み者になってもいいというのか!」 レアに対する所業とケイロン誕生の経緯を知っているティターン神族達は一斉に「お前が言うな」と呟いた。だが、娘がゼウスの手篭めになるのが嫌なのは事実。娘を持つ父であるティターン神族はそれに同意した。 「お前たち! ゼウスが嫌いではないのか! ゼウスが来る前は天界で王道楽土を築き、毎日が女神やニンフに蝶よ花よとされた楽しい暮らしをしていたではないか! ところが! ところがだ! ゼウスが我を追いやって以降はこんなテッサリアの平原で冷や飯食いではないか! 悔しくは思わんか! 今やティターン神族の権威はガタ落ち! オリュンポス神族にその権威はそっくりと掠め取られている! 悔しいとは思わぬか! 再び我らの王道楽土を取り戻すために! 立ち上がるのだ! 神々よ!」 テッサリア平原に神達の(とき)の声が上げられる。クロノスは嫌いだが、ゼウスはもっと嫌い。そんな神々が自分たちの尊厳を取り戻すための(いくさ)のために立ち上がったのである。 その後、ティターン神族による宣戦布告がオリュンポスのゼウスの元に送られた。ゼウスはそれを受諾し…… 巨神族戦争(ティタノマキア)開戦である!
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